TIGER & BUNNY#19「There's no way out. (袋の鼠)」

 誰もが怪しいと思っていた人物が、やっぱり怪しかった。素晴らしきかな、このぶれのなさ。
 良く言えば王道、悪く言えばありがちな展開であっても「あーはいはい」とは思わせずに「おお、きたー!」と思わせてくれる、それが一番の魅力だと思うのです。この作品。
 そして裏切るべきでないところはちゃんと心得ている。バーナビーの両親が、真に善良で正義感の強い人間だったと確定して、凄く嬉しいです。

 ここ最近、ヒーロースーツでのアクションが殆ど無いのは淋しいですが、かわりに濃密な人間ドラマが繰り広げられていて、なんだか悔しい面白さ。
 主人公ふたりのすれ違いっぷりには、感情移入してやきもきすると同時に、ドラマとして面白くて面白くてニヤニヤしてしまう。
 アップダウンの激しさったら。

 今回の白眉は、虎徹がヒーローを辞めるつもりでいるとバーナビーに知られてしまった後の、スケート場での口論。
 聞き流せばあーはいはい気持ちのすれ違いね、と聞き流してしまえるのですが、よくよく一言ずつ吟味して聞くと、物凄く練り込まれた会話であることが分かります。
 ポイントは、虎徹の口調、そして語気の違い。前半、バーナビーの問い詰めに対して、誤魔化しているようで実は質問によってはっきりと「違う」と言ったり「いや、それは……」と言葉尻を濁したりしている。つまり、確実に言えることについては、ちゃんと断定しています。
 しかしバーナビーにはおそらくその違いは読み取れておらず(というか普通に気づけないだろう)だんだん己の言葉そのものでヒートアップしていき、言ってはいけない言葉をも口にしていく。それにしたがって、虎徹の語気が重く低くなっていき、ついには無意識に手が出てしまう……と。
 練り込まれた台詞に加え、声優さんの絶妙の演技、さらには音楽の効用によって、実に緊張感のある会話の応酬に仕上がっている。
 私がTIGER&BUNNYを見ていて最も面白く感じるのは、この部分なのであります。

 ふたりの関係性が緊迫したものとなり、見ていても辛い今回でしたが、脱力シーンを入れてあるのが、救いでした。
 っていうかこてつさんなににのってるんですか。なにやってんですか。虎on虎ですか。それにツッコミを入れるより先に、シリアスな問い詰めモードに入らざるを得なかったバーナビーさんの心中お察ししますわ。

 で、バーナビーが虎徹以外に頼る人といったら、マーベリックしか居なくて。
 明らかに怪しいオーラを放ち出したマーベリックは、先程の会話とは別種の緊迫感満載。サマンサの電話を受けて、おそらく二十年間積み上げてきたであろうマーベリックへの信頼が崩れ、呆然とするバーナビーは、見ていて痛々しかった。

 しかし、マーベリックが怪しいとは誰もが思っていたかと思いますが、ここで明かされたスタンスを完全に予想していた人は、なかなか少ないんじゃないでしょうか。
 私の場合、ぼんやりと予想していた部分は、ブルックス夫妻の殺人実行犯であること、HERO TVの盛り上げの為にバーナビーを身中に抱えたこと、バーナビーの記憶を何らかの方法で改竄しているだろうということ。ただし、最後の項については、斎藤さんの装置を使っているのかな、と思っていました。
 全然予想していなかった、あるいはまさか無いだろうと思っていた部分は、マーベリックがNEXTであったこと、NEXTの地位向上の為に努めていたこと。

 しかし、こうして真相が明らかになってみると、いろいろと腑に落ちる伏線がちゃんとあります。
 よりによってクリスマスの日に家族では無い人間と街へ遊びに出たバーナビー(ブルックス夫妻が大事な話があるからと連れ出させたのでしょう)、玄関口で引率者と別れるバーナビー(友人の子どもなら両親に引き渡す方が自然だけれど、引率者が使用人であれば、不自然さがほぼ無くなる)、シュテルンビルトでの犯罪率の高さと凶悪犯罪の多さ(3話の爆弾魔騒ぎも仕組まれたものだったと考えるといろいろと辻褄が合う)、etc...
 ああ、また第1話から見直したくなってきた。

 バーナビーは再度記憶を改竄されるようですが、いったいどの時点から、どの部分を変えられてしまうのでしょう。
 虎徹との整合性も取らなければならないし、サマンサはどうするのか、とかいろいろと気になります。
 次回予告も意味深なカットが多すぎて、思わずコマ送りして見てしまった……。

 まんまと制作者の術中にハマってる。でも楽しいからいいの。

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 こちらは微妙なマウスパッド。アニメ絵でもせめて描きおろしてくれよう。