宇宙兄弟#66「二つのノート」
デニール・ヤングの指導により、本格的に始まるT-38飛行訓練。
身体のみならず、頭のノートに書き付ける知識、心のノートに書き付ける精神、そういったものまできっちりと叩き込まれる。
しかしいわゆる「教育」という言葉の持つ押しつけがましい印象は微塵もないあたりが良いのですね。
デニール・ヤング自身の性格もさることながら、元々、すべては自分自身に跳ね返ってくる宇宙飛行士訓練だから、かな。
そして、指導する立場であるヤングもまた、特訓中。
車椅子と杖の扱いについて、ここで一応納得のいく説明が為されます。
シャロンの場合は決定的な未来として「身体が動かなくなる」わけですが、ヤン爺の場合は有り得るかもしれない未来として「身体が動かなくなるかもしれない」わけで。
それはそれで、いつ何時症状におそわれるか分からず、しんどいものであるかも。
このふたりを並行して描くのは、ただ宇宙を目指すという表層のみならず、いかにして生きるか……いかにして死に向き合っていくか、という、さらに深い作品のテーマへと踏み込んだことを示していたのかもしれない。
ゆえに、静かでユーモアに満ちた日常回であるのに、不思議と緊張感がありました。
シャロンの手紙。筆跡は弱々しく、けれど意志は力強く。
受け継がれるものはある、けれど、その前に彼女自身が為し遂げられるものは、まだまだある。
生きていく限りは、ある。
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宇宙兄弟 心のノート 「メモしたくなる言葉たち」 (KCピース)
で、企画ものでこんな本も出ていたわけですね。レビューを見るとあまりかんばしくないようですが。
どうせなら白紙のノートを出して、枠外に作品内の名台詞を小さく書いておいて、「あとは貴方が埋める」みたいなものにすれば良かったのにね。冒険だろうけれど。