機動戦士ガンダムAGE#49「長き旅の終わり」(終)
そんな、無理矢理100年にしなくても。
結局この物語は、三世代の壮大なるサーガではなくて、フリット・アスノという人物の一代記だったんだな。
アセムもキオも、狂言回し、あるいは正負両面におけるフリットの引き立て役に過ぎず。脇役たちもすべてはフリットのために存在する。そう考えると、サブキャラクターの扱いの適当さにも納得が行きます。
フリットは作品内で一貫して英雄であり、救世主であり。行為はすべてが最終的に肯定される。
……最初にもっと明確に言っておいて欲しかったです。
銅像エンド、ひたすら気持ち悪かった。
フリット説得のために出てきて、フリットが救世主となるお膳立てに尽力したアセムとキオは、もうその存在自体が何だったんだろうなあという。
最初から最後まで、少年→青年→壮年→老年のフリットが主人公でよかった。少年が年降りゆく一代記を貫いたら、それはそれで、ひとつの評価を得たのではないかと思います。
最終決戦で、ただ戦場を引っ掻き回すため、共通の敵となるために出てきた、イゼルカント・クローン君とシドが気の毒すぎる。
それでも、例えばここにディーンもしくはゼハートが生き残っていて、キオorアセムとともに戦ったりしたなら、ヴェイガンと手を取り合うという行為に僅かなりとも感動できたかもしれないのに。ほんと、なんであんなにキャラを殺す必要があったのか、未だに分からない。
空気すぎたヒロイン・ウェンディとか(ところで忙しく治療しているはずがなぜ艦長の隣で悠長に戦闘見物しているのか不思議だった)、海賊船を乗っ取ったのはどうなのよ失礼じゃないかお前ら?とか(ここまでにクルーのしっかりした実力を描いておくか艦長のカリスマを打ち出せば納得できたのに)ツッコミどころには事欠かないわけですが。
結局のところ、欲張りすぎたのが一番の問題だったんだろうなあ、と思います。
ガンダムらしい要素、ゲームにして生きる要素、歴代シリーズのオマージュ的要素。子ども向けの要素、年季の入ったファンに受ける要素。
多種多様なキャラクター、数々の語られないエピソード。
とにかく、思いついた順に入れていって、しかも以前に投入したものについては置き去りにしてしまうものだから、ただパラパラマンガを見せられているような気持ちになる。
ストーリーの整合性なんて考える暇を与えず、目の前にぽんぽん「ドラマの素」だけを放り出される。あるいは逆に「ドラマの素」無しに勝手にドラマが始まって終わる。
欲張っていながら、交通整理が為されていないんですよ。お話としての。アニメらしく言うならば「シリーズ構成がまともに為されていない」と言うべきでしょうか。
役どころの重複しているキャラクターを整理すれば、人数はおそらく半分以下に減らせるし(例えばアセム編はモビルスーツ部の学友をそのままMS部隊に放り込めばよかったし、キオ編ではディーンを強化人間にしてイゼルカント・クローンと役回りをまとめるべきだった)、そうすれば個々のドラマの重みもぐっと増し、結果として内容の濃さも増したはず。
水増しじゃ、駄目なんだよ。ずらずらと書割を並べただけじゃ、ドラマにはならない。
スピンアウトは作りやすいだろうけれど。別にスピンアウトの素材として作った一年シリーズのTVアニメじゃないでしょう。
不満が募るのも、実のところ、並べられた素材は決して悪くはなかったから、なんだよね。もっとしっかりと料理して見せてくれたら、とてもおいしくなったであろうと思われる部分が、あまりにもたくさん。
アセム編の開始時、キオ編の開始時には、普通に面白く見た時期もありました。ウルフやアリーサなど、なかなかの良キャラクターも居ました。Xラウンダーではないことに劣等感を抱きつつ、純粋に実力だけで己を高めていく、アセムという主人公は、とても魅力的でした。
おそらくスタッフのモチベーションが(「ガンダム」と冠された作品としては)相当低かったと思われる中、作画の素晴らしさにはしばしば目を奪われました。戦闘シーンのクオリティについては、どこに出しても恥ずかしくないものだと思います。
本当に、もったいなかった。ガンダムという名前と、これだけの素材を使って、万人に受け入れられる名作となり得なかったのが、残念でなりません。
それでも一年間付き合って、いろんな話題に触れて、呆れたり笑ったりしみじみしたり、悲喜こもごも。うん。それなり、楽しゅうございました。
スタッフの皆様、お疲れ様でした。ことに作画・演出班には、いろんな意味で惜しみない労いの言葉を贈りたいです。
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君の中の英雄 Artist Side(DVD付)
実はガンダムAGEのOP・EDすべての中で、一番好きでした。こっそり白状しますと、作中、ユリンとの会話でこれが流れた時は、ちょっとだけうるっとしましたよ……ちょっとだけね。
バラードバージョンも収録されているCD。最終回に流れたのはそれかな。いずれにせよ、嬉しい仕掛けでありました。最終回を見ていて、唯一、素直に良かったと思えたシーン。かもしれない。