神のみぞ知るセカイ 女神篇#12「初めて恋をした記憶」(終)

 一般人、普通の人間、普通の女の子。
 女神さまにはなれなくても、翼を得ることはできなくても……あるいはそれゆえに、それ以上に、輝く瞬間がある。
 普通の人間、普通の女の子。それゆえの強さ。それゆえの輝き。
 実際、ちひろは、何も特別なことはしていないんですよね。ただ素直に、普通の感性と、普通の恋心と、普通の友情で動いただけで。けれど、このうえない桂馬と歩美のサポートになった。
 普通の人が特別に頑張るんじゃなくて、普通の人が普通にちょっとだけ損な役回りを負った。この図式が、たまらなく好きです。

 恋愛感情絡みで、最も桂馬を、作品を、視聴者を揺さぶった。
 それをもってしてヒロインと呼ぶのなら、ちひろこそ、この三期におけるヒロインと呼ぶに相応しい存在でした。
 女神を宿してはいなかったちひろが、この女神編のヒロイン・オブ・ヒロインと呼べる存在であったことは、テンプレに見えても必ずどこか捻くれ……もとい捻ってくる、この作品らしいなぁとしみじみ。

 あ、ヴィンテージの叛乱の決着もありましたね。えーと、女神たちとハクアさん、頑張っていましたね。ついでにノーラもおいしいとこ取っていきましたね。
 あっちはあっちでバトル込みの燃え展開でもあるのですが、等価、あるいはよりウェイトを置いて、ちひろの感情の決着が語られるというのもまた、この作品らしいなぁとしみじみ。しみじみしっぱなしです。
 他の女神(と、その宿主)の出番がじぇんじぇん無かったのは残念でしたが。栞とか栞とか栞とか。まあ、しょうがないか。これはこれでいいか。女神は出現した時点で作劇上の役割は終えているわけだから。
 とにかく、ちひろ、そして桂馬へと集約していく最終回でありました。

 傷ついたちひろが魅力的であればあるほど、傷つけた桂馬の、傷つけたことにより傷ついている(ややこしい)様子もまた、実に響いてくる。
 今までは、攻略女子の記憶は消えてしまうということで、失恋(文字通り失うという意味で)の記憶に傷つくことがあるとすれば桂馬だけ、自分だけで済んでいたのが、今回は違っていて。すると、「誰かを傷つけた」ことに、これだけ傷ついてしまうんだな。神にーさま。
 ……いい子だな。

 それらを踏まえた上で、大団円として一期エンディングであったコイノシルシで締めくくりつつ、ラストシーンへと。
 桂馬が歩き出す。扉を開ける。
 いくつもの意味に受け取れる、どんな意味に受け止めてもいい、日常の仕草のひとつなのに、不思議と力あるラストシーン。
 素敵でした。

 一期・二期の丁寧すぎる、ゆっくりすぎる作りから一転、とにかく密度濃く詰め込んでいるのがよく分かる三期でした。
 物足りない、見足りないように感じる部分もありますが、それにも増してテンションの高さと疾走感が小気味良かった。
 二期と三期の狭間で省略されたヒロイン、ストーリーがあることは、返す返すも残念ですが、そこをぶっ飛ばしてこういう手法を取ったことも、個人的には評価したいと思います。あの娘やあの娘の攻略をアニメで見ることが出来なかったのは残念だけど!残念だけど!!その責はむしろ一期・二期にあるかな、と……。

 後ろ髪引かれる、くらいがちょうどいいのかな。
 いずれにせよ三期、面白かった。堪能いたしました。
 ありがとうございました。

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 今にして思うに、歩美の印象が他ヒロインと比べてもひときわ強いのは(最初の攻略対象ということを差し引いても)、一期一話での濃縮された攻略エピソードの出来が良かったせいもあるんじゃないかなぁとか。後だし的に考えてみる。難しいところです。

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