映画『伏 鉄砲娘の捕物帳』

 興味を抱きつつ、いつも行っている映画館では上映しないことで面倒くさいなぁと思っていたところに、トークショーつき上映の告知が。
 首都圏に住む者の恩恵を享受せねば、と。行ってきました。

 トークショーは撮影OKってのが、なんだか新鮮だった!っていうか、そうか。声優じゃないからか。
 声優だと「芸能人」みたいなもので、肖像権がうるさいんですよね。

 でもって、宮地監督と、「借りぐらしのアリエッティ」の監督のトークショー
 正直これは失敗しました。いやトークショーが、じゃなくて、自分の選択という意味で。
 ……だってわたくし、アリエッティ見てないんですもの!

 でも「伏」の上映でのトークショーだし、裏話的ないろいろが聞けるかなと思ったら、なんか「アリエッティ」の裏話とか、ジブリの影響の話とか、宮崎駿に学んだこととか、いつものパターンの宮崎監督武勇伝とかで。
 いや興味深い話ではあるのですが、期待していたものと全然違いました。「伏」の話は、全体のせいぜい一割から二割も無かったんじゃないかな。
 うう。ほんと失敗した。脚本家まじえての先週のトークショーに行っておけば良かった。そっちでは脚色の話とか、していたようですし。

 ちなみに終了後、パンフレット購入者向けの監督サイン会がありましてよ。
 ちゃっかり貰ってきました。

 パンフレット、700円。装丁は渋くて綺麗だけれど、ちょっと薄いかなぁ。それなりに読むところはありましたが。600円なら文句言わなかった、うん。

 原作未読です。八犬伝の知識もほぼありません。やくしまるひろこのえいがでむかしみたなぁ(としがばれますよ)程度。
 かなりオリジナル要素が強くなっているそうなので、まあ大丈夫かな、と思い。

 ともあれ、本編。
 まずは、音楽が素晴らしかった。私が元から大島ミチルの音楽が好きである、ということを差し引いても、この作品に、この場面に、こう劇伴をつけるのか、という良い意味での意外性があり。
 映像も綺麗でした。女の子が主人公ということで、ピンクを基調にして色彩設計したとのこと、確かに見終わってどこか暖かく華やかな色彩が目の裏に残ります。
 ただ「異世界なお江戸」はもう少し濃く描き込んで欲しかったかな、と思うのは、最近のTVアニメで描き込み激しすぎ情報量多すぎな架空歴史なぞりものを見てきたせいですね分かりますホ信凶。
 暖色系は目に麗しい反面、どこかしら空想めいて見えがちである、というのもあるかも。
 あ、吉原のあほな仕掛けは楽しかったです。ああいうのがもっと見たかった。

 基本的には、主人公である浜路の成長物語(恋愛込)でありました。
 田舎の猟師娘が江戸(架空のパラレルなお江戸ですが)に出てきて、出逢って、戦って、恋をしてっていう。
 この浜路がですね、なんというか、最初は、びっくりするほど可愛くない。
 へそ出しの良く分からない猟師ルックで、剛毛っぽい髪の毛、ほっぺたにはかっぺたん、それでスレンダーな野生児的だったら個人的にはけっこう萌えたかもしれないけれど、なぜか太ももがむっちむち、ちちもでかい(と思ったんですがなぜか作品中では男と間違われたりする)という、ほんと「かわいらしさ」というものが無い。
 冒頭でいきなり亡き祖父を思って泣き出すのも、同情するより先に「え?」と思ってしまったりして。
 愛でることも、感情移入することも出来なくて、最初のうちどうしようかと思った。
 しかしそれが終盤になって、劇的に可愛くなる。そこがポイントであり、最大のカタルシスなのではないでしょうか。

 反対に、信乃は、登場から退場までずっと安心して見ていられるキャラでありました。アクションやら、人外のものらしい不気味さやら、浮き世離れした雰囲気やら、宮野真守の演技やら、いろいろと分かりやすく。

 お話について。全体の流れは分かりやすいものなんですが、それゆえに、ご都合主義的に感じられるエピソードや物語展開も目に付き、正直、個人的には、手放しで褒められる……というか、誰かに「面白かったよ!」と無条件で言える映画ではなかったな、と。
 街角で衝突して(略)とか、放り投げられて衝突して(略)とか、見ていてずっこけそうになった。

 しかし、終盤のカタルシスはほんと大きかった。浜路が可愛すぎるし、なんか知らんけどみんなで一致団結協力して盛り上がっているし、なんか知らんけど殿様は大ボスの風格出してるし、屋根の上の決闘だし、火事と喧嘩と花火っていう江戸の華叩き売り状態だし。

 ことに屋根の上でのシーン。
 ここだけでも、見た甲斐はあったな、と思わせてくれる名場面でありました。
 それまでけっこう醒めて見ていたのに、ここだけは、じんわりと来てしまったのことよ。

 美しい、心に残るシーンが、ひとつでもある。
 それだけで、映画って、許せちゃうよね。うん。
 爽やかに、後味よく終わってくれたのも、ポイント高いです。
 見終わった満足感は、なかなかありました。
 良作、佳作であり、ひとにより楽しめる。と、思います。

 最後にわりと台無しな感想を言うと、神谷浩史の「いつもの神谷じゃない」演技を聞くことが出来たことで、地味に加点ですよ!
 最初気づかなかったもんなあ……。
 ゲストで芸能人枠も居ましたが(なかなか悪くなかった)基本的にプロの声優で固めたキャスティングは、ほんと嬉しかった。昨今の、一般にも向けたアニメ映画で、これは貴重。

追記:
 こちらの感想&考察がたいへん素晴らしかったです。いろいろと腑に落ちました。
※ネタバレ注意というか映画本編を見てから読まないと意味がないです。

 みそら絵日記『伏 鉄砲娘の捕物帳』 感想&勝手解説 【ネタバレ全開】

 いやあ凄いなあ。これだけ読み取れるなんて。
 私の場合、よっぽど愛のある作品を、何度か見返さないと、こんなに考察&理解できないわー……映画館で一回見ただけじゃ無理だわー……。

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伏(ふせ) 贋作・里見八犬伝 (文春文庫)
 原作。こちらもだいぶ癖がある作品のようで、低評価の意見が目立ちます……ね。
 作者が作者だからなぁ。評価がぱっきりと割れるタイプですよね桜庭一樹

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