超訳百人一首 うた恋い。#13「定家と式子 式子内親王 権中納言定家」(終)
最終回、ラスト・エピソードに相応しく、これまでは語り部としてのみ登場していた藤原定家自身にスポットを当てたお話でありました。
これまた切ない、よき話であったことよ。
百人一首の中でも「玉の緒よ〜」の歌はかなり早くから知っていましたが、返歌があるなんて全然知らなかった。と思って、軽く検索してみたら、これが確実に返歌であるかどうかは諸説ある感じなのですね。
しかし、直接の返歌ではなくても、藤原定家と式子内親王の関係性を思うに、じゅうぶん有り得る……と、思わせてくれる、この「超訳」がだいすきですよ。
歌に託したかりそめの恋、彼我の立場を思いあう大人の距離感、それらの影で静かに、けれど確固として流れる想い。
表面のノリはとても軽やかに仕上げてあるのはいつも通り。今回は藤原定家というキャラクターの明るさも加わって、いつにもましてからりとした雰囲気でしたが、叶わぬ恋のやるせなさは、むしろそれゆえに高まっていたように思います。
大原さやか演じる式子内親王がまた、物静かでありながら情熱的、包み込むような穏やかさを持ちながらたおやかで、思慮深い才女。実に素敵な女性でした。ずっと気の強い、アクの強いヒロインが続いていただけに(いやそれもいいんですが)なおさら沁みる魅力がありましてよ。
予想外に楽しめた第一話から、最終話に至るまで。オムニバス恋愛ストーリーという、個人的にはわりと苦手なジャンルなのですが、とても楽しく面白く見ることが出来ました。
百人一首は昔から好きだけれど勉強不足の知識不足だなぁと痛感しているものだったので、そのへんで知的好奇心を刺激された、というのは大きいかもしれない。
いずれにせよ、旧き恋物語の、現代に通じる大胆な翻案=超訳の面白さが、最大の魅力でありました。
人が人を想う、というシンプルなテーマ。シンプルな気持ち。
何時の時代であっても、通ずるテーマ。通ずる気持ち。
作画・演出は、テクスチャべた貼りが好みの分かれるところで、だいぶ損をしていた気がします。が、全体に、人物の感情、情感はしっかりと伝わり、見ていてストレスを感じることはありませんでした。
崩したり、デフォルメしたりも、楽しかったなー。
肩の力を抜いて、しかし目を離すことなく、楽しく見ることの出来た作品。
スタッフの皆様、おつかれさまでした。素敵な作品をありがとうございました。
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とりあえず、何度も何度も何度も言いましたけれど、アニプレ価格がどうにも耐え難いというか……せめて三話入りにしてくれればいいのに。東宝とかVapみたいに。