『DTエイトロン』(1998年・TVアニメ)

 某所に投稿したレビューを一部改稿。
 我が心のアニメのひとつ、『DTエイトロン』のレビューです。


DTエイトロン DVD-BOX
 監督:アミノテツロー
 シリーズ構成:柿沼秀樹
 キャラクター原案:市田
 キャラクターデザイン:田中良
 音楽:難波弘之

 シュウ:保志総一朗
 メイ:夏樹リオ
 ドリー:矢島晶子
 アイン:諏訪部順一
 ナインツ:辻谷耕史
 フィア:川澄綾子

 いわゆる「エヴァ後」の作品であり、主人公の外見がぱっと見てシンジと似ていること、性格も内向的で気弱な少年であったこと、また回によって作画のレベルが極めて低かったことから、エヴァ人気に便乗した粗製濫造の深夜アニメと思われてしまう向きがありますが。
 独自の世界観と死生観を持ち、それでいて押しつけがましくもなく、切々と訴えくるもののある物語。
 埋もれた良作のひとつであると思います。

 荒れ果てた世界、全てが管理されたドーム都市、体制に抗う人々。「約束の地」を探し、旅立つ主人公達。
 地に降り立つ謎めいた人工生命体は、どこかしらクラシカルなヒーローを彷彿とさせる。

 ディストピアの概念を中心に、SFアニメのお約束をたくさん詰め込んでいます。
 けれど全体にはどこか穏やかで、時にすっとぼけたテンションは、監督のアミノテツローの個性が発揮された結果でしょう。

 どんな場面においても、ひとはひとである。そう訴えかける、人間くささ。
 ひとでない存在もまた、ひとと等しく成る。そう訴えかける、人への信頼。

 全体に、明るく楽しいとは言いがたい作品であり、結末も、物語の終焉としては納得の行くものではありますが、やりきれなさを多分にはらみます。
 けれどどこか清々しく、解放感のあるラストシーンには、不思議と前向きな感情をかきたてられずにはいられない。

 貫かれるは、海への憧れ。……海が象徴するもの。
 水面を渡るイルカ、空を舞い飛ぶ海鳥が、強い印象を持って、心に残ります。

 ブレイク前夜のDragon Ashによるオープニングテーマ「陽はまたのぼりくりかえす」、Jungle Smileによるエンディングテーマ「同じ星」も秀逸で、物語を盛り上げるのに大きく貢献していました。
 ことに「同じ星」は、上手に切り取られた歌詞により、甘く切ないラブソングがグローバルに「星」への愛を語るようにも聴こえ、作品のテーマと相俟って、素晴らしく感動的です。

 惜しむらくは作画の乱れで、正直、正視に耐えない話数も多々あり。第2話から早くも崩れ始めているのは、見切り発車に過ぎたのだろうな、としか。
 しかし、それに目を瞑って全話通して見てみれば、世紀末を目前とした90年代に、こんなにも希望に溢れた物語が綴られたことに、なにがしか勇気づけられずには居られません。

 大好きな作品です。

 現在、DVD-BOXは発売されていますが、出来ればBDで再発売して欲しいところ。画質には多くを望みませんが、まとめて2〜3枚に収まってくれれば、集中を途切れさせずに視聴が出来るし。
 祈願を込めてのレビューでした。