夏目友人帳 参#5「蔵にひそむもの」

 ちいさきもの、ちいさき想い。

 原作でも、個人的に最も好きなお話です。

 己の目には見えずとも、妖怪を愛してやまなかった、多岐慎一郎という人物がどうにも琴線に触れて。
 同時に、目を合わせることは叶わなかったのに、信一郎を愛した妖怪たちが切なくて可愛らしくて。

 しかしただ叙情的なだけではなく、発端は友情話かと思わせて、おどろおどろしい「祟る」妖怪との身体探し競争、右手を奪いに来たというシチュエーションが怖すぎる戦闘、と、内容は盛りだくさんに詰め込んでありました。

 中盤までは、古い家の怖さと、家の何処に潜むか分からない妖怪とで、ホラー風味の方が強い展開でしたが。
 実際、夜中にひとりでヘッドフォンつけて見てると、だいぶドキドキします。もともと怖がりってこともありますけれど。

 しかし、怖い話やバトルに終始せず、ああいった結末を真のクライマックスに持ってくるあたりが、少女マンガらしいというか、この作品らしいというか。何というか。

 ラストのBGMが卑怯だ。もう泣け泣けと言わんばかりに。
 でも、単なるお涙頂戴にならない、心地良さがある。何なんだろうなあ。と、原作を読んだ時から、思っているエピソードです。

 触れ合いそうで触れ合えない。
 けれど、通じ合えないようで、通じ合っている。
 そのへんかな。

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夏目友人帳 11 (花とゆめCOMICS)
 今回のエピソードの原作が収められている巻。
 レビューも高評価&長文が多くて嬉しい。語りたくなる物語だもの。