TIGER & BUNNY#17「Blood is thicker than water. (血は水よりも濃い)」

 虎徹の里帰りと、心の持ちようの変遷。

 悪党との派手な戦闘は無く、ヒーローTVの華麗な中継も、ポイント争奪戦もありませんでしたが、おそらくこれはこの作品の本流となるエピソードのひとつ。

 大人向けの作品というふれ込みが、これまでで最も実感出来た回でした。
 いや「大人が見て楽しめる作品」であることは今までも充分に感じていたし、その要素があってこそ私もここまでハマってしまったわけですが、今回のエピソードについては、大人が見てこそ、大人だからこそ、身につまされる感を含めて楽しめる部分が多くあった、ということで。
 20代以上で、仕事を持っていて、かつ家族から離れて暮らしている人には、あるある話すぎてもう痛いのなんの。だったのではないでしょうか。

 迎えに来た兄との車内、どことなく居心地の悪い沈黙とか。
 辿り着いた玄関で、ただいまと言って誰も応えず、やっと会った母親に「早かったね」と言われるとか。
 勝手知ったる自分の家、自分の部屋であったはずが、既に己の居場所ではなくなっているとか。
 寝室が無くて仏間に布団敷いて寝かされて、酒飲みながら寝転がってテレビ見るとか。
 ああもう帰省のあるあるがあるあるすぎて、共感しすぎて、笑っちゃうやら泣けちゃうやら。

 今回一番の気に入りが、兄と飲むシーンです。
 虎徹が見せる、家族だからこその甘えによる会話、そして兄が見せる、兄らしい強さに満ちた言葉。一連のやりとりが、本当に渋い大人のドラマしていました。
 言ってくれなければ分からない。言わなければ伝わらない。

 これまでの描写で薄々察していましたが、兄の口から明確に、虎徹はひとりですべて抱え込んでしまう性格だと明かされたことで、さらに切なく。
 能力に目覚めた時にも、ひとり悩んでいたということは、能力を得るに際して悩み、能力を失うにあたってまた悩む……のか。辛い。
 妻の臨終に立ち会えなかったことにしても、ずっと傷として抱えていて、だからこそあえて自分の家庭環境についてはヒーロー間でも話題に出すことを避けていたのだろうな、と。
 1クールからの、細かな描写を思い出すたび、しみじみとさせられます。

 後半は話が大きく動き、楓とのすれ違いを払拭し、また虎徹が己の自信を取り戻す、まだ「やれることがある」と再確認するエピソード。
 ここまで、楓との関係性にはだいぶじれったく思わされてきたので、今回は大きなカタルシスがあって満足でした。
 ハンドレッドパワーでの超聴覚演出も格好良かった。そしてパワーが切れても怪力すぎる。もう素でヒーローやっちゃえよ!(と、皆が思ったことだろうし、そうなる可能性もあるんじゃ……と思ってもいますが)

 新たな境地に達し、ヒーローを辞めることを決意する虎徹。「シュテルンビルトは卒業」という言葉は、少なからずショックだったりしましたが……。
 しかし、物語を俯瞰して見るに、辞表を出すと決意したことにより、虎徹は「ヒーローで有り続ける自分への依存」を、一旦断ち切ったということの表れなのだと思います。
 これは、レジェンドが、ヒーローで有り続けることに固執した結果、自分も家族をも壊してしまったことと、対照となっているのでしょうね。

 その上で、もう一度ヒーローとして戻ってきてくれることを期待しています。
 虎徹が楓のヒーローであることは重要。けれど、それと同時に、ワイルドタイガーが市民のヒーローで有り続けることも、きっと出来ると思うから。

 ともあれ、今回は虎徹スキーな私はたいへん満足でしたが、ワイルドタイガースキーな私は若干不満でした。
 やっぱり、ヒーローで居て欲しい。ヒーローで居る姿を見たい。
 どうなっちゃうのかなあ。

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 4巻の映像特典は、USTミニコーナーの総集編その1が収録。これはたいへん嬉しゅうございます。最近になってUST視聴を始めましたが、なにげにキャスト&スタッフの談話が面白すぎますもの。
 しかも映像特典53分て! 大盤振る舞いだなー。

 
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