PSYCHO-PASS サイコパス#22「完璧な世界」(終)

 麦畑の美しさと、夕焼けと。
 あらかじめ定められていたかのような決着と。

 最終回に相応しい美麗な絵で魅せてくれて、実に眼福でありました。見ながらずっと「もっと大きいテレビで見たい……」と思い続けておりましたよ。ちなみに、没入感を高めるため&単純に画面が暗くて見づらいため、部屋の明かりを消して見ました。目に悪いから良い子は真似しちゃだめだよ!

 狡噛と朱。狡噛と槙島。槙島と朱……よりは、朱とシビュラ。
 いくつもの対話(言葉以外のものも含めて)が交わされた最終回。

 狡噛が朱に対して、タフになりすぎだとか言っていますが、それとは裏腹に、狡噛の視点から見た朱は、やたらと可愛くて参っちゃいました。なんというか、凛々しく頼もしいと同時に、ちっちゃ可愛かった。可愛く見えてしまった。それも示唆的だったのかな。

 朱の涙は、狡噛を止められなかったことに加えて、狡噛が自分の手の届く範囲から去ってしまったことへの手向け、でもあったのかも。
 己の無力感と。淡い恋慕も、もしかしたら。
 縺れて絡まった、どうしようもない感情。そういったものを想像させてくれるところが、ほんとうに好きでした。このアニメ。

 狡噛と槙島の関係性もまた、暗喩に富んでいて、見ていて非常に感情をかき立てられるものであり。
 シンヤ(深夜)とショウゴ(正午)という名前については、全然思い至らなかったなぁ。同じ「0時」でありながら決してまみえることのない、対の存在。
 そのふたりの最後の対決が夕暮れ時に行われるのは、必然であったのか。
 初見ではこういった仕込み、下地には気づきませんでしたが、それでも、強く心揺さぶられるものがありました。
 個人的に、銃で頭を撃ちぬかれるシチュエーションには弱い(何故か知らないけれど大好きで大嫌いで気持ち良くて気持ち悪くて総じて強い恐怖と畏怖を感じる)こともあって、見ていて本当に、文字通り撃たれたように痛かった。

 朱とシビュラの対話もまた、ひとつの対決。
 シビュラが語った「未来」、そして常守朱という存在を重んじる理由が面白かった。つまり、シビュラシステムの管理下にある人間全員が、朱のように、清濁併せ呑んでシビュラを受け入れることが目標なのか。いわゆる管理コンピュータものの着地点としては、なかなか。皮肉たっぷり、苦味たっぷりですが。
 朱にとってはこれ、永遠の撤退戦とも呼べるような気がする。
 けれど、ラストでは、第1話の冒頭を繰り返しているようで、少し違っていて。
 それが鍵なんだろうか。
 朱の飛ばした激は、次の一手への布石なんだろうか。
 信じ続ける。

 最後の最後まで、世界観のブレ(説明&描写の絶対量の不足もですが、それよりも、普通に見ていて受ける印象と実際の世界設定との落差がネック)は否めず、それゆえに作品世界に入り損ねる感があったのは、本当にもったいなかった。
 見どころであり見応えのあった人間ドラマ部分は、結局、その殆どが世界観に因らずとも成り立つものだったのが、良くもあり悪くもあり。
 ゆえに、ドラマに乗っていくことが出来るかどうかは、けっこう難しいところであったのかも。そういう意味で、キャラクターの関係性を楽しむ習性が強いと言われている女性のファンが多くついたというのは、納得のいくところです。
 これもノイタミナのひとつの有り方なのかな。是非については両論ありましょうが。

 オリジナルで、分割ではない2クールアニメ。それを、これだけきちんとまとめ、終わらせてくれた。途中で作画の怪しい回はありましたが、全体としては高いクオリティを保ってくれたことも、嬉しかった。
 ネタバレを気にしてリアルタイム視聴するのもまた楽しかったなぁ。最速ゆえの贅沢でもありましたスミマセン。
 意見の分かれるところもある作品でしたが、ともあれ私個人としては文句なしに面白く、楽しく、最後までテンションを保って視聴いたしました。

 スタッフの皆様、素敵な作品をありがとうございました。

 蛇足。
 新体制の公安局刑事課一係での狡噛と征陸ふたりぶんの属性と役割を背負っちゃったギノっちまじ苦労人。そのどっちにも貫禄で負けてるあたりギノっちまじヘタレ。でも無能とは呼ばないで!
 メガネは伊達だったけれど、メガネそのものの重要性は文句無しだった。君は立派なメガネキャラだよ。今期のヘタレメガネ枠では独走だったよ。
 そんなわけで、宜野座さんお疲れ様でした。これからも朱ちゃんのもと、苦労人としてヘタレキャラとして、頑張ってね。

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 ちょうど発売のBD第4巻。レビューは褒め称えるものばかりですが、「参考になった」票がきっぱり半々に割れているという。なんというか、そういう作品なんだな、と。

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